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「ギリシア」という表記について

田川 建三 『書物としての新約聖書』 (勁草書房、 1997) って いう 本 の 「後書き」 に 「ギリシア」 って いう 表記 に ついて かいて ある とこ が ある。 まえ に なん度 か これ に ふれた こと が ある けど、 くわしい 内容 に ついて は かかなかった から、 ここ に 引用 して おく こと に する。

最近、特に西洋古典学に従事する人たちの間では「ギリシア」と書く人が多く、それが徐々に西洋古典学の外にもひろがるようになってきている。しかし、この表記は正しくない。この表記をはやらせたのは、私がまだ学生だった頃の西洋古典学の先生方であった。最初に言い出されたのがどなたであるかは知らないが、呉茂一先生などがこの流行を生み出した一人の責任者であったようだ。しかし、彼の場合にはそれなりの正しさがあった。つまり彼は日本語の単語としての発音上も「ぎ・り・しゃ」と発音せずに、「ぎ・り・し・あ」と発音なさっていたのである。そう発音するのならば、むろん、表記は「ギリシア」となる。理屈は、日本語のギリシャという単語はもとをただせばラテン語のグラエキア(グラエシア、Graecia)なのだから、「しゃ」ではなくて「し・あ」が正しい、ということである。
 という理屈に基づいて、律儀に、きざに、日本語として常に「ぎ・り・し・あ」と発音なさるのなら、そう表記なさればよかろう。しかし、実際には日本語の「ギリシャ」を「ぎ・り・し・あ」と発音する人などほとんど存在しない。実際に発音してごらんになればわかるが、「ぎりしあ」と発音するのはかなりやり難い。つまり、もとはラテン語から取られたものであるにせよ、これは日本語の固有名詞なのである。従って、日本語として長年定着してきた言い方を無理に変える必要はなく、その長年の言い方は日本語として発音しやすく、覚えやすいようにできているのである。ロシアならば「ろしゃ」とは発音せず、「ろ・し・あ」と発音するから「ロシア」と書く。それに対し、「ギリシア」と書いておいて「ぎりしゃ」と発音する法はない。

日本語の「ギリシャ」をどうしても「ぎ・り・し・あ」と発音したい人だけが「ギリシア」とお書きになればよろしかろう。

「ギリシア」 って いう かきかた が どう して できた の か、 この 説明 以外 に みた こと が ない けど、 まあ ここ に かいて ある とおり な ん だろう。 とにかく まえ に も かいた みたい に、 「ぎ・り・しゃ」 って よませる つもり で 「ギリシア」 って かいてる ん なら、 そんな 表記 は おかしい。 いま の ニホン語 で そんな よみかた は ない (「ギリシャ」のかなづかい)。

こまかい こと を いえば、 ニホン語 の ギリシャ の もと は ポルトガル語 だ から (「ギリシャ」という名まえ」)、 「もとをただせばラテン語」 って いう の は いい けど、 「もとはラテン語から取られた」 って いう の は ちょっと あいまい って いう か 不正確 だ。

それ から 「『ぎりしあ』と発音するのはかなりやり難い」 って いう の は、 ふだん 「ぎ・り・しゃ」 って いってる ひと は そう だ けど、 最初 っから 「ぎ・り・し・あ」 って おぼえた ひと が いる と すれば、 その ひと に とって は いい にくい って こと は ない だろう。

で、 もと を たどれば ラテン語 の Graecia だ から って こと なら、 「ギリシア」 って かく ひと は どう して こう いう 中途半端 な かたち に する ん だろ って おもう。 どうせ かえる ん だったら いま の 外来語 に ならって 「グリシア」 に すれば いい よう な もん な の に、 なんで 「ギ」 の まま な ん だ? (むかしの外来語」) もちろん ギリシャ じゃ なくて グリシア の ほう が いい なんて いう つもり は ない けど。

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2014.01.08 kakikomi

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